公益セクターの会計基準をめぐる情報


第2回 営利企業と公益法人等


1.企業の本質は利益追求である


企業活動の社会性、社会的責任は動機として重要だが常に形骸化の危険性


企業の活動資金は社会の拡大再生産の仕組みの中にある

  • 消費と投資
  • 効率性、有用性の社会的調整
  • 直接金融と間接金融
  • 利益がないと投資なし
  • レバレッジ効果
  • 内部確保と配当
  • 利益追求の自己目的化
  • 競争と独占
  • 日本の特徴と曲がり角
  • 日本株式会社
  • 間接金融、護送船団
  • 政策による誘導、規制、非関税障壁

企業予算の決め方

  • 目標利益額の決定:総資本利益率
  • 固定費の設定
  • 1-変動費率(粗利益率)で割算する
  • 目標売上額の決定

2.営利企業だけではカバーできない社会的分野の存在


基本的人権の保障 難病
身心障害
母子
青少年
老齢者
・措置からの自立支援に
・隔離からノーマライゼーションへ
安全保障 防衛
治安
防災
環境
衛生
検査
医療
・防災至上から地球的規模の環境保全へ
・治療から予防
産業振興、
知的基盤整備
教育
基礎研究
研究助成
知的財産権保護
・行政主導から民間主導へ
産業振興、
社会的基盤整備
道路
空港


輸送機関
通信
放送
・生産のための基盤から生活のための基盤へ
・物重視から情報重視へ
エネルギーの確保 電力
ガス
水道
・安定供給から価格競争へ
金融・財政   ・護送船団方式の崩壊
・金融財政の分離
戸籍管理    

国・地方自治体の場合、社会的に必要な支出が収益以外の要素にもとづき議会で決定される。

公益セクターの場合、まず収入予算が決定され、それにもとづいて事業計画が作成され支出予算が決定される。


日本の問題点

全ての方向性を国が決定し、誘導。助成。規制。独占。

敗戦後の荒廃した情況からの復興。先進諸国に追いつこうとする場合は手本があるだけ有効。トータルコストも少なくて済んでいた。手本がなくなり、より自由で大胆な発想転換が必要。安かろう悪かろうから、より品質のよいものをより安くへ。

現在では既得権益化し社会発展の阻害要因に。コスト意識の欠如、むだな事業。天下り。

自主的発展の阻害、ベンチャーが育たない。

行政情報が利益左右。系列化。汚職。族議員。

但し、競争原理は弱肉強食の側面。独占を防ぐ仕組みが重要。米国航空業界、マイクロソフト

又、利益追求原理ではカバー出来ない公益セクターは必要不可欠。


3.主な公益セクター


学校法人:
私立学校法:
教育という重要な公益活動を荷う安定的な事業継続は不可欠:基本金制
定私学振興財団による補助金、融資
学費、入学金の設定は自由であり、競争原理が働く。
社会福祉法人:
社会福祉法:
福祉8法に裏付けられた福祉事業を主たる目的とした活動を行う公益
安定的な事業継続は不可欠:設立時の補助金
措置制度から利用費制度へ:サービス利用者と提供者の対等な関係
隔離からノーマライゼーションへ
介護保険法の適用にあたっても利用料の単価は実質上決められており、競争原理は利用者の選択が可能であるという点に限られている。
公益法人:
民法34条:
財団法人と社団法人が存在し、様々な公益活動を行っている。
運営上の規定が詳しくないため、その後指針が示されている。
設立認可の基準もあいまいだったため、その見通しと各法人の存在意義の再検討が行われている。
安定的な事業継続は必要だが、時代の要請の変化により解散もあり得る。
奨学金財団等の一部を除き、行政サービスに付随する業務で、行政自身が行うより 効率的なものを委託されている場合も多い。従って競争がない場合も多い。

これらは利益を第一の目的としない事が前提である。
つまり収益-費用の差を最大限にするという観点ではなく、どのような公益活動を行うかが重視されており、そのために必要な収入については、何らかの社会的水準が示されているか、又は全くの別ルールにもとづいて決められることがほとんどである。
公益活動の主体からみれば、まず資金的裏づけをもった確実な収入を見積り、その上でどのような事業を行うかを支出として示すこととなる。


KEY-WORD
  • 自主、自由
  • 対等な関係
  • 自立支援
  • ノーマライゼーション
  • 悪かろう安かろうからの脱却、経営感覚



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